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孫に生前贈与する際の注意点

  • 文責:所長 税理士 寺井渉
  • 最終更新日:2024年9月24日

1 孫への生前贈与の利点

子への生前贈与や孫への生前贈与は、相続税対策としてしばしばなされています。

子ではなく、孫に生前贈与する利点としては、相続税の贈与加算の対象になりにくいという点があります。

相続税は、相続財産や保険金だけでなく、生前贈与された財産の一部にも課税されます。

このように、贈与された財産に相続税が課税されることを、贈与加算と言います。

よく、110万円以下の贈与については、贈与税が課税されないという話がなされますが、相続税の贈与加算との関係では、110万円以下の贈与であっても、相続税の課税対象となってしまいます。

相続税の贈与加算の対象になるのは、相続人に対し、相続の日から遡って7年間になされた生前贈与です(ただし、7年前から3年前になされた生前贈与については、累計100万円までは非課税とされます)。

このため、子への生前贈与については、相続人に対する贈与になりますので、相続の日から遡って7年間になされたものは、贈与加算の対象となり、相続税の課税対象とされてしまいます。

他方、孫への生前贈与については、基本的には相続人に対する贈与ではありませんので、贈与加算の対象にはならず、相続税の課税対象にはなりません。

このように、孫に対する生前贈与は、基本的には贈与加算の対象にならないため、相続税対策としては、子に対する生前贈与よりも強力であると言えます。

ただ、孫への生前贈与については、いくつかの注意点があります。

こうした注意点を踏まえずに贈与を行ってしまうと、相続税対策として意味のないものになってしまいかねません。

ここでは、孫への生前贈与について、いくつかの注意点を説明したいと思います。

2 相続人ではない孫に生前贈与すること

ご自身の子が亡くなっており、孫がいる場合は、孫は、亡くなった子に代わって、法律上の相続人となってしまいます。

このように、亡くなった人に代わって相続人となる人のことを、代襲相続人と言います。

子が存命でないため、孫が相続人になってしまうと、その孫に対する生前贈与は相続人に対する生前贈与になってしまいますので、相続税の贈与加算の対象になってしまいます。

他にも、孫をご自身の養子として養子縁組していると、孫が相続人になってしまいますので、その孫に対する生前贈与は、相続税の贈与加算の対象になってしまいます。

さらに、法律は、孫養子に課税される相続税は2割加算すると定めています。

このため、養子となった孫に生前贈与すると、贈与加算により相続税が課税されるだけでなく、相続税の額が1.2倍に増額されてしまいます。

このように、相続人になっている孫に生前贈与をしても、贈与した財産は相続税の課税対象になってしまいますので、相続税対策の効果は薄れてしまいます。

相続税対策として生前贈与を行うのであれば、相続人ではない孫に生前贈与した方が良いこととなります。

3 遺贈を受ける予定のない孫に贈与すること

相続財産を引き継ぐことができるのは、基本的には、相続人だけとなります。

ただ、遺言を作成すると、相続人ではない人に財産を引き継ぐものと定めることができます。

このように、遺言を作成すると、相続人ではない孫であっても財産を引き継ぐことができます。

つまり、孫に対して相続財産を遺贈することができます。

ところで、法律は、相続等により財産を取得した人が、相続税の贈与加算の対象になると定めています。

この、相続等には、遺贈が含まれています。

このため、遺贈を受けた孫に対して生前贈与された財産も、相続税の贈与加算の対象になってしまいます。

さらに、この場合も、相続税の2割加算の対象となり、相続税が増額されてしまいます。

このように、遺贈を受ける予定の孫に生前贈与をしても、贈与した財産は相続税の課税対象になってしまいますので、相続税対策の効果は失われてしまいます。

相続税対策として生前贈与を行うのであれば、遺贈を受ける予定のない孫に対して生前贈与を行った方が良いでしょう。

4 生命保険金の受取人ではない孫に贈与すること

生命保険金の受取人に孫が指定されていることがあります。

ところで、先に、相続等により財産を取得した人が、相続税の贈与加算の対象になると述べましたが、この相続等には、生命保険金の受取も含まれています。

このため、生命保険金の受取人となった孫に生前贈与された財産も、相続税の贈与加算の対象になります。

生命保険金については500万円×法定相続人数の非課税枠がありますが、生命保険金の額が非課税枠を下回っていたとしても、生命保険金の受取人になった以上、相続税の贈与加算がなされることとなってしまいます。

また、この場合も、相続税の2割加算がなされることとなり、相続税の負担が1.2倍に増額されてしまいます。

以上のとおり、生命保険の受取人になっている孫に生前贈与を行ったとしても、結局、贈与した財産にも相続税が課税されることとなってしまいます。

このため、相続税対策として生前贈与を行うのであれば、生命保険金の受取人になっていない孫に対して生贈与した方が有効であることとなります。

5 実体を備えた贈与を行うこと

贈与の対象となる孫は、年少であることが多いと思います。

贈与を受ける人が年少であると、贈与が実体を備えたものになっておらず、あとで、課税上は、贈与がなされていないものとして処理されてしまうことがあります。

たとえば、孫名義の口座に毎年110万円を入金しているものの、通帳や証書、キャッシュカードについてはご自身で保管されており、孫(孫が未成年の場合は、孫の親)の側では、自由に出金することができないといった事態が生じてしまっていることはないでしょうか?

さらには、孫(孫が未成年の場合は、孫の親)の側は、孫名義の口座に入金されていることは、認識すらしていないといった事態が生じてしまっていることはないでしょうか?

上記のような場合には、贈与が実体を備えておらず、贈与されたはずの預金が名義預金として、相続財産の一部として扱われてしまう恐れがあります。

このため、贈与されたはずの預金についても、通常の相続財産と同様、相続税が課税されることとなってしまうのです。

このような事態が生じてしまうと、相続税対策としては、何の意味がなかったということになってしまいかねません。

実体を備えた贈与とするため、孫に対する贈与を行う場合は、特に以下の点に注意した方が良いでしょう。

➀ 贈与契約書を作成すること

※ ご自身と孫が署名して作成します。孫が未成年の場合は、孫の親が親権者として署名します。

② 通帳、証書、キャッシュカードについては、孫が管理すること

※ 孫が未成年の場合は、孫の親が管理します。

③ 贈与された預金については、孫自身のために使っておくこと

④ 年間110万円を超える贈与については、贈与税の申告、納付を行うこと

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